受診案内

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子宮筋腫

子宮筋腫とは?

子宮の筋肉にできるコブで、婦人科疾患で最もよくある良性の腫瘍です。20~40才代の女性の約20~30%にみられます。発生する位置によって「漿膜下筋腫」「粘膜下筋腫」「筋層内筋腫」と呼び分けます。筋腫の大きさは、小さいものは米粒大ですが、大きいものではスイカほどになることもあります。

漿膜下筋腫

筋腫が大きくなると圧迫症状が出現します。頻尿、腹満感、便秘、疼痛などの原因となります。

 

筋層内筋腫・粘膜下筋腫

比較的小さくても過多月経、不整出血、疼痛、不妊症などの原因となります。

子宮筋腫の症状

主に次の4つの症状が見られますが、無症状のことも少なくありません。

①過多月経・過長月経・貧血

②月経痛・変性や捻転による疼痛

③頻尿・尿閉・腰痛・便秘などの圧迫症状

④不妊症・不育症

Q:生理の出血量を他人と比べることがないので分からない……

A:目安として、月経時に「レバー状の塊」がたくさん出るようなら過多月経が疑われます。

 

Q:貧血の症状ってどんなもの?

A:めまい、立ちくらみ、倦怠感、頭痛、蒼白、眠気、集中力の低下、耳鳴り、味覚異常などが挙げられます。

また、無性に氷を食べたくなってしまう「氷食症」も貧血の症状として知られています。氷食症の原因は明らかではありませんが、体温調節の障害が関与しているといわれています。

妊娠・出産への影響

多くの人は子宮筋腫があっても普通に妊娠・出産ができます。ただし、切迫早産・早産・胎位異常・難産・胎児発育不全・分娩時異常出血・前置胎盤・常位胎盤早期剥離などのリスクが増えるため、手術が必要なケースもあります。
また筋腫が不妊症の原因となっている場合には、筋腫摘出で妊娠率の上昇が期待されます。

子宮筋腫の診断

まず問診で自覚症状をお伺いし、内診で子宮の硬さや腫れ方を確認します。その後、患者様の状態にあわせて次のような検査を行います。

超音波検査
経腹超音波検査

お腹のうえからプローベを当てるので痛みはなく、どんな人にも検査ができます。皮下脂肪の厚い人や小さな病変の場合は見えづらくなります。

 

経腟超音波検査

腟からプローベを挿入し子宮の観察を行います。小さな病変も見ることができる反面、性交未経験の人には困難な場合があります。その場合肛門からプローベを挿入し検査を行うことがあります。大きすぎる病変には経腹超音波を併用します。

MRI検査

筋腫の位置や大きさ、個数を把握するうえで有効な検査です。CTとは異なり放射線被爆はありませんが、体内に金属の入っている方や、閉所恐怖症の方は検査ができません。

子宮鏡検査

原理は胃カメラと同じです。腟から子宮鏡と呼ばれるカメラを挿入して子宮の状態を調べます。子宮の粘膜下筋腫の診断に有効で、筋腫の大きさ・個数・突出率の把握を行います。

子宮筋腫の治療

薬物療法

消炎鎮痛剤等による対症療法や、一時的に月経を止めて筋腫縮小を目指す偽閉経療法、月経量を減らして疼痛緩和を行う治療などがあります。薬剤の使用には条件や副作用もありますので、患者様の年齢や状態にあわせて処方を行います。

筋腫のみを取り除く手術

今後妊娠出産を希望される場合は、筋腫のみを摘出します。筋腫の大きさ・位置・個数・癒着の有無と身体への負担の程度を考慮して手術方法を決定します。

開腹手術

取り除く筋腫の数や大きさに制限はありませんが、術後の痛みが強く、傷も残りやすくなります。当院では可能な限り、ショーツに隠れる位置での横切開で行っています。

 

腹腔鏡下手術

腹部にいくつかの小さな切開を行い、切開部位から鉗子やカメラを挿入して行います。開腹手術よりも視野が広くなり、カメラで拡大された画像により繊細な手術が可能です。傷や痛みが少なく、出血量や癒着も軽減されます。手術時間が長くなりやすいことや、全身麻酔による身体への負担は発生します。また、摘出した筋腫の回収が難しい場合には、開腹手術へ移行することもあります。

 

子宮鏡下手術

粘膜下筋腫を対象とした手術です。電気メスがついた子宮鏡で子宮筋腫を削りだします。腟から子宮鏡を挿入して手術を行いますので、お腹に傷は残りません。痛みはないか、あってもごく軽度です。手術翌日には退院でき、すぐに日常生活に戻ることができます。筋腫が大きすぎる場合は子宮鏡下手術の対象外となります。

 

Q:手術を受けたあとの出産は、どうなるの?

A:開腹や腹腔鏡で子宮を切開した場合、その後の妊娠には子宮破裂リスクがあるため、自然分娩ではなく帝王切開が選択されることが多くなります。また子宮破裂リスク軽減のため、手術後は一般的に3~6ヶ月の避妊期間を設けて頂いています。

 

筋腫を子宮ごと取り除く手術

妊娠出産希望がない場合は、上記同様に筋腫のみを摘出する場合と、子宮全体を摘出する場合があります。子宮を摘出する際には「開腹」「腹腔鏡」の2種類の方法があります。筋腫の大きさや癒着の状態、分娩歴によって摘出方法を選択します。手術による身体への負担は大きくなりますが、再発の心配はありません。

Q:子宮を取って生理がなくなると更年期障害が心配です

A:更年期障害は女性ホルモンの減少が原因となります。女性ホルモンは卵巣から産生されますので、子宮を摘出しても卵巣を温存した場合には、手術が原因で急に更年期症状が出現することはありません。

マイクロ波子宮内膜焼灼術(MEA)

子宮内膜を焼くことで行う、過多月経の治療です。過多月経を改善することで、筋腫による痛みの軽減も期待されます。治療後に30%の方は無月経になります。妊娠出産希望がない場合に可能な手術です。お腹に傷はつきませんが、子宮筋腫は残ったままですので、症状再発による追加治療が必要になる場合もあります。治療による痛みは軽く、術後すぐに日常生活が可能です。

各手術の比較
開腹 腹腔鏡 子宮鏡 MEA
お腹の傷 8~15cm 1~5cm
痛み 中~弱
入院日数 1~2週間 1週間 3日間 3日間
適応条件 筋腫の大きさは…
制限無 骨盤腔に収まる程度 3~5cm程度まで 内腔の変形が著明でない

 

P O I N T

治療の選択のポイントは「今後の出産希望の有無」「根治を望むかどうか」「侵襲度(身体への負担の程度)」です。すべての患者様に希望通りの手術が行えるわけではありませんが、可能な限り希望をお聞きして、患者様に負担の少ない手術を提供しています。