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心房細動
心房細動とは?
心臓は全身に血液を送るポンプとして一生休みなく働き続けます。心臓は主に筋肉から構成されていて、全身及び肺へ血液を循環させるポンプの働きをしています。絶え間なく収縮を繰り返し、1分間に5~10リットルもの血液を全身へ送り出します。それを1日の量に換算すると、心臓は10,000リットル(家庭用浴槽の50杯分)もの血液を全身に送っているのですから、その重要さは言うまでもありません。そのポンプとしての働きは一生休むことなく、規則正しく実行されます。しかし、時としてそのリズムが狂うことがあり、場合によってはそれは命取りになりかねません。
心房細動と脳梗塞の関係
2000年4月1日、小渕恵三首相は脳梗塞で倒れ、同年5月14日に62歳の若さで亡くなりました。また、2004年3月4日、もと読売巨人軍監督の長嶋茂雄氏が脳梗塞で倒れました。共にその原因は心房細動という不整脈でした。
心房細動とは文字通り、心房が細かく震える不整脈であり、その結果として心臓の脈が乱れます。同時に心房の中の血液がよどみを作り、血栓が生じる確率が高くなります。その血栓が何かの拍子に脳の血管に流れていくと、脳の血管が詰まり脳梗塞を発症します。脳梗塞は3種類に分けられます。
ラクナ梗塞
アテローム血栓性脳梗塞
心原性脳塞栓
心原性脳塞栓症は、心臓内でできた大きな血栓が血流で飛ばされるため、大梗塞を起こす傾向があります。また、血栓が溶けると出血性梗塞といって梗塞巣内に出血が起こり、急速に悪化することがあります。結果として命を落としてしまったり、重度の後遺障害を残す場合が少なくありません。
心房細動と健康寿命
日本は平均寿命は男性81歳、女性87歳であり、世界の長寿国の仲間入りをしていますが、一言で「長生き」と言っても元気で長生きでなければ人生を楽しめません。そこで現在では「健康寿命」と言う言葉がよく使われます。 2000年にWHO(世界保健機関)が提唱した概念で、日常的・継続的な医療・介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し自立した生活ができる生存期間のことです。
2013年の厚生労働省による「国民生活基礎調査」によれば、要支援・要介護が必要となった原因の第1位は脳卒中であり、第2位が認知症でした。日本では近年は脳梗塞の中でも心原性脳塞栓症が増加しており、また心房細動の患者さんが脳梗塞を起こすと約半数が死亡、寝たきり、要介護になると言われています。すなわち心房細動による脳梗塞発症は大きな社会問題と言えます。
出典:厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査」要介護別にみた介護必要となった主な原因の構成割合
心房細動のある方は無い方に比べ、脳卒中の発症頻度は数倍に上昇、また死亡率は2倍に増加すると言われていますが、それだけでなく「心不全」という心臓の働きが弱くなる病気とも深い関係があります。最近動いた時の息切れが強い、すぐに「はーはー」と言うようになった、等の症状が心房細動から来ている事もよくあります。
また最近では、認知症の発症リスクも上昇するという報告があります。このように厄介な不整脈ですが、近年日本では心房細動の患者数は増加しており、定期健診で見つかった心房細動患者数より予測しますと、2030年にわが国で心房細動を持つ人口は100万人を突破すると予測されています。従ってその治療は今後ますます重要な問題となります。
心房細動の治療
ところが、なぜ心房細動という不整脈が起こるのか、またどうすれば治るのか、あるいは防げるのかといった事は、長年明らかではありませんでした。従って、治療としては脳梗塞を予防するための抗凝固剤の内服、あるいは心拍数コントロールの為の抗不整脈薬の内服しか有りませんでした。しかし抗凝固剤には出血性合併症という副作用があり、また抗不整脈薬は効果が長続きせず、最終的には慢性心房細動に固定してしまうという欠点がありました。ところが最近心房細動の発症機序の一部が解明され、またカテーテル・アブレーションという根本的治療法も開発され、大きな光明がもたらされています。