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不整脈

不整脈

 不整脈とは心臓の打ち方が不規則となる状態で、脈の乱れや、動悸(ドキドキ)、めまいとして感じる場合がよく見られます。規則正しい脈の場合でも、徐脈(脈が遅すぎる)や頻脈(脈が速すぎる)としての不整脈もあります。不整脈は誰もが経験しうる大変身近な疾患で年齢とともに増加する傾向があります。無症状で放っておいても差し支えないものも確かに多いのですが、失神や脳梗塞を起こすもの、突然死の原因となるものもあり、注意を要します。

不整脈との知恵比べ

 不整脈は多彩な症状で出現しますし、目の前の不整脈に気を取られ、実は真犯人は別だった。などということもしばしばあります。ちょっと意外なのは、めまいや失神、けいれん、空咳などの症状が不整脈から起こることです。70歳の現役で活躍していらっしゃる、ある会社の社長さんは、6秒も心臓が止まる発作(洞不全症候群)を繰り返していました。車の運転中に気を失いそうなことが何度もあり、胸をたたきながら交渉先に車を飛ばすことが、しばしばあったとのことでした。よく気絶して事故を起こされなかったものだと思います。また、ある会社員の方は、食事を呑み込むと気絶しそうになるので、長い間、腕をブンブン回しながら気合いを入れて食事をしていたと言います。ノドの自律神経が刺激されて10秒近い心停止が誘発されていた例でした。また、別の例では一晩に20回も発作を起こす、てんかんとして他院から紹介され、これが徐脈頻脈症候群という不整脈のせいであった例もありました。
また、逆に不整脈と思っても真犯人が他にいることもあり要注意です。動悸は確かに不整脈でよく見られるのですが、貧血、甲状腺機能亢進症が隠れていることもあります。不整脈だと思って循環器科を受診したが、実はひどい貧血で胃潰瘍からの出血であった例などがあります。「木も見て森も見る」ことが不整脈診療においても大変重要です。

不整脈の診断

 不整脈の治療方針を立てるのには、心電図による診断が不可欠です。不整脈は20種類以上あり、種類によって治療法が異なります。動悸やめまいなどの症状があれば、その時の心電図がとれると診断の動かぬ証拠となるので、全力を挙げてそれを捕らえるようにします。しかし、いざ心電図を取ろうとした時には、なかなか出てくれず、患者さんから「あんなに家では出ていたのに病院に来た時に限って出てくれない」と歯がゆい思いを聞くことがよくあります。このような場合、24時間心電図や小さな携帯型心電図記憶装置が役にたちます。後者は持ち歩けるポケットサイズの機械で、異常を感じたら胸にあてると波形が記憶されます。これを普通の電話から病院に自動送信するものです。

どのようにして起こるのか

 心臓は電気で動いており、電気系統の異常が不整脈です。電気系統は心臓を一つの会社になぞらえると理解しやすくなります。心臓は電気命令を発する指令部(社長)、これを伝達する部分(副社長)、ポンプとして働く部分(社員)に分かれます。指令部の異常には、命令を発しなくなる(洞不全症候群)、命令が非常に多すぎる(心房細動)、命令が指令部以外から発せられる(期外収縮)などがあります。また、指令伝達の異常には、伝達が遅れたり途絶えたりする(房室ブロック、脚ブロック)、伝達が一部でクルクル空回りする(発作性上室頻拍、心室頻拍、心室細動)などがよく見られるものです。
このような不整脈の根本原因は解明されていない部分も多くありますが、動脈硬化、ウイルス、遺伝などが土台にあって、ストレスや自律神経の働きが影響して生じます。

不整脈の横綱、心房細動と心室期外収縮

 不整脈のなかで最もよくみられるのは心房細動と心室期外収縮でしょう。高齢化にともない、心房細動に悩まされる患者さんが非常に多くなっています。医師の間でも関心が非常に高く、学会などでも立ち見がでるくらい満員となります。このように心房細動が重要視されている原因は、1)患者さんが増えている 2)脳梗塞の大きな原因となっている 3)決定的治療法が確立されていない 4)心不全を悪化させやすい などの点が挙げられます。心房細動は、頻脈が突然生じることが多く、夜間突然の不快な症状で病院に飛び込まれる方も多いのです。心房細動があると、脳梗塞の危険が高まるので要注意です。このため心房細動の患者さんには血栓予防薬がよく処方されます。脳梗塞の頻度はワーファリンという薬で1/3に減らすことができます。心房細動が昼間に起こるタイプと夜間におこるタイプがあることがわかり最近、薬を使い分けています。
 心室期外収縮は、胸が「ドキン」と大きく打つなどの症状でよく起こり、学校や会社検診で指摘される不整脈としては最も多いものです。ほとんどは心配ないものですが、重症かどうかの判定には、1)頻度 2)連発があるか 3)基礎の心疾患があるか の3ポイントで行います。特に基礎の心臓の状態は重要で、エコーなどで観察して問題ない場合は、運動も含めて普通に過ごして差し支えないことが多いものです。

自律神経との深い関係

 自動的に体内の環境を調節するのが自律神経です。例えばこれから100m競争をしようというときに心臓がドキドキします。これからの激しい運動に備え筋肉に大量に血液補給をすでに開始しているのです。もしこの自律神経反応が無く走り出すなら、脳の血液が筋肉に一気に奪われて、気を失ってしまうかもしれません。自律神経は心拍数をはじめとして、心臓に強い影響力を持っています。自律神経は交感神経と迷走神経から成り立っており、両者は相反する方向で心臓を中心として綱引きをしています。いつもストレスで緊張状態にあると、交感神経亢進状態にあり、不整脈が生じやすくなります。一方、迷走神経が亢進するとゆっくりタイプの不整脈が生じます。トイレ中の失神などはこのメカニズムによるものです。

治療のポイント

 不整脈の治療は不整脈の種類と重症度によって異なります。診断には心電図が重要ですが、治療は心電図のみから、自動的に導かれるものではありません。目の前の患者さんの全身状態や、心機能、合併する心臓病、予後の知識などが集約されてなされるべきもので、よくオーダーメードの治療が重要であると言われます。
 不整脈の治療は薬剤の服用がもっともよく用いられるものですが、最近の医療電子工学の発達により、ペースメーカ植込み、カテーテルアブレーション、手術、植込み型自動除細動器など、より確実な治療をめざして発展し効果を上げています。
 しかし、不安が病気をつくっている例も多く見られますので、きちんと診断してもらったら、リラックスして過ごすことも不整脈治療に重要です。不整脈の年配のご婦人が心電図検査をしましたら、「いい電気治療をしてもらいました」とその後来院されなくなりました。この方にとっては安心が一番治療になったのかもしれませんね。