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ペースメーカー治療
病気の解説
心臓はポンプとして全身に血液を送っていますが、そのコントロールは微細な電気で行われています。このコントロールは電気指令を作り出すところ(洞結節)と電気指令を伝えるところ(房室接合部)が重要な働きをしています(図1)。
電気指令をつくれない、あるいは伝達がうまくいかない場合、脈がゆっくりになり、心不全やふらつき失神をきたします。病名として前者を洞不全症候群(電気を作れない)、後者を房室ブロック(電気を伝えられない)とよび、不整脈により心臓の脈の数が少なくなる状態(徐脈)です。
治療の目的・必要性・有効性
めまい、意識消失、失神、突然死などの症状を改善もしくは予防するために徐脈であったのを正常な脈拍数に戻し、全身の血流を良くすることが治療の目的です。
治療の内容
ペースメーカーはリードとジェネレーター(コンピュータ内蔵の電源)からなります(図2)。リードとは、心臓と電気のやり取りをする電線のことで、一般に肩の静脈(鎖骨下静脈)から心臓の部屋(右房・右室)へ1本ないし2本入れます。ジェネレーターとは電気信号を制御するコンピューターと電池が内蔵されたものです。重さは40g程度のものが多いようです。ペースメーカーは胸の皮膚の下に植え込むことが一般的です。心臓の自然に近い働きをするために2本リードのDDDペースメーカが推奨されています。また、リードが損傷しにくく安全な、胸郭外穿刺と心室中隔ペーシングという方法を最近は行います。
手術の手順
局所麻酔で行い、約2時間の手術時間で終わる予定です。まず左前胸部に局所麻酔を行い5cm前後切開し、ペースメーカー本体を留置するポケットを作成します。次に鎖骨下静脈を穿刺しリード線を右心房、右心室に留置します。電気的に安定した場所を探しリードをしっかりと固定した後リード線をペースメーカー本体につないでポケットに留置します。最後に切開した筋肉と皮膚を縫合し手術は終了です。
手術後当日から歩くことが可能で、7日以内に退院できることがほとんどです。電池に関しては残念ながら充電式のものは未だ商品化されておらず、多くのものは7年から10年で電池がなくなってしまいますので、その場合にはペースメーカーの電池交換が必要となります。またごくまれではありますが、ペースメーカー、リードの故障やペースメーカーを入れている部分の感染症などの問題がおこることがありますので、定期的な診察が必要ですし、体の不調がある場合はすぐに主治医の先生に連絡をとるようにしてください。
治療に伴う危険性とその発生率
(一般的に言われている頻度)
- リード位置移動 …(1.1%)
- 皮下血腫 …(0.9%)
- 気胸 …(0.3%)
- 縫合不全 …(0.3%)
- 創部感染 …(0.2%)
- 心タンポナーデ …(0.1%)
- 横隔膜神経反射 …(0.1%)
- リード本体接続不良 …(0.1%)
偶発症発生時の対応
- リード位置移動、縫合不全、リード本体接続不良(0.1%) ←再手術が必要なことがあります。
- 細菌感染 ←抗生剤の点滴や、場合によっては創部開放やリード抜去が必要です。
- 皮下血腫日 ←圧迫止血や血腫除去術などが必要です。
- 気胸 ←トロッカー挿入などの処置が必要なことがあります。
- 心臓・神経の損傷 ←外科的手術が必要なことがあります。
- 心タンポナーデ ←速やかな心嚢穿刺や外科的手術が必要です。
以上、万が一偶発症が起きた場合の処置は通常の保健診療となります。
代替可能な治療
病気によっては内服薬で経過観察できることもありますが、多くの場合、高度な徐脈に対してペースメーカー治療にかわる治療はありません。
【出典】(図1)(図2)『心電図をたのしく読む入門書』 森 経春著 南江堂